黒が教えてくれること
今日は、なんだか気分が引き締まるような、そんな一日だった。 街のざわめきから少し離れた、このコンクリートの縁に腰を下ろして、通り過ぎる人々をぼんやりと眺めている。
全身を黒でまとっていると、不思議と心が落ち着く。 黒は、全ての色を包み込み、そして吸収する色。 まるで、私の心の中にある色々な感情を、全部受け止めてくれるような、そんな安心感がある。
今日の私を象徴しているのが、このレース模様のタイツかもしれない。 前にも、白いレースのタイツについて書いたことがあったけれど、黒のレースは、また少し違う気分にさせてくれる。 白いレースが「軽やかさ」や「開放感」だとすれば、黒いレースは、「強さ」や「意志」を感じさせてくれる。 複雑に絡み合った糸が、光と影のコントラストを際立たせ、揺るぎない一つの模様を描き出している。
足元のレース模様を眺めていると、時々、自分の心の中の迷いや不安が、まるでこの模様のように、複雑に絡み合って、どうしたらいいのか分からなくなる瞬間を思い出す。 でも、その一つ一つの糸が、今の私を形作っている。 この模様のように、どんなに複雑に絡み合っていても、それは決して無駄なことではない。 一つ一つの経験が、私という人間を、強く、そして美しく織りなしていくのだと、そう信じたい。
そして、この編み上げのブーツ。 足元をしっかりと固めてくれるこの靴を履くと、どんな道でも歩いていけるような、そんな気持ちになる。 少しヒールがあるのもいい。ほんの少しだけ、視界が高くなるだけで、見えてくる世界が違って見える。 上を向いて歩こう、と、そう教えてくれるようだ。
空は、どこまでも高く、遠くまで広がっている。 黒い服に身を包んだ私は、空の青さや、木々の緑を、いつもより鮮やかに感じている。 黒が、周りの景色をより際立たせてくれるように、私も誰かの心を、少しでも明るく照らすことができるような、そんな存在になりたい。
この街で、この一瞬を生きている私。 黒という色に守られながら、私は今日も、ゆっくりと、しかし確実に、前へ進んでいく。