PR

孤独な女王の夜

Views: 27

窓の外は、もうとっくに闇に包まれている。 私は、この部屋の、誰も座ることのないベッドの上に座り、この夜の闇を、一人で独占している。 昼間の私を知る人は、この場所にいる私を見たら、きっと驚くだろう。 なぜなら、ここには、彼らが知っている私とは、まったく違う私が存在しているから。

私の肌に触れる、滑らかなサテンのガウン。 その深紅の色は、私の心の中で燃え上がる情熱を映しているようだ。 そして、その下には、黒いレースのランジェリー。 このレースの模様は、私の内面に秘められた、複雑で繊細な感情の羅列。 それは、決して人前で晒すことのない、私だけの秘密。

足元には、蜘蛛の巣のように、美しくも危険な香りを放つ網タイツ。 この網の目は、私を、外の世界の危険から守ってくれる盾であると同時に、 私という存在を、誰にも触れさせない、見えない檻でもある。 このタイツを履くと、私は、誰の助けも借りず、一人で生きていける、孤独な女王になれるような気がする。

ふと、自分の指に目をやる。 マニキュアを塗った爪が、薄暗い光の中で、怪しく輝いている。 それは、まるで、私という存在の鋭い部分を象徴しているようだ。 簡単に、人に心を開くことはしない。 そう、私の心は、誰にも傷つけられないように、いつも武装している。

この部屋には、私しかいない。 誰にも見られないこの時間、私は、自分の心と、素直に向き合える。 今日あった出来事、心の中に生まれた小さな喜びや、拭い去れない不安。 全てを、この闇の中に、そっと解き放つ。

私は、聖なる天使なんかじゃない。 光ばかりの場所にはいられない、暗闇に咲く花だ。 孤独だけが、私を強くしてくれる。 夜の闇だけが、私をありのままに受け入れてくれる。

そう、私は、孤独な女王。 この夜が明けるまで、私はこの場所で、誰にも邪魔されることなく、私だけの時間を生きる。 そして、また明日、太陽が昇れば、私はこの深紅のガウンを脱ぎ捨て、再び、社会という舞台へと戻っていく。 しかし、この夜の記憶が、私を、昼間の世界で強く生きていくための、秘密の力になってくれるだろう。

タイトルとURLをコピーしました