坂道の向こう、新しい扉
あの日、私は少しだけ、自分に自信がなかった。心の中に、小さな不安の種が芽生えていて、それが、ずっと頭から離れなかったんだ。でも、そんな気持ちを吹き飛ばしたくて、思い切って、普段は行かない場所へ出かけてみることにした。
選んだのは、坂道を上った先にある、古びた洋館。昔から、その洋館には、不思議な噂があったんだ。迷い込んだ者が、なぜか元気になって帰ってくる、って。もちろん、ただの噂だとは分かっていたけれど、今の私には、そんな非現実的な話にすら、すがりたかったのかもしれない。
坂道を上り始めると、ひんやりとした風が、頬をかすめていった。まだ午前中だというのに、空はどこか曇り気味で、遠くからは、教会の鐘の音が、控えめに響いてくる。そんな少し物悲しい雰囲気が、私の心と重なった。
洋館の門をくぐると、手入れの行き届いた庭園が広がっていた。色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りが漂っている。その香りに、少しだけ心が癒されるのを感じた。
建物は、思っていたよりもずっと大きくて、歴史を感じさせる重厚な造りだった。窓ガラスは、きれいに磨かれていて、光を反射してキラキラと輝いている。誰かが、大切に手入れをしているのが伝わってくる。
私は、洋館の入り口に続く石畳の道を、ゆっくりと進んだ。一歩一歩踏みしめるたびに、心の中の小さな不安が、少しずつ小さくなっていくような気がしたんだ。
扉の前で立ち止まり、深く息を吸い込んだ。本当に、ここに入っていいのかな? そんな迷いが、一瞬頭をよぎった。でも、ここまで来たんだから、引き返すわけにはいかない。
意を決して、重厚な扉に手をかけた。ひんやりとした金属の感触が、指先に伝わってくる。そっと扉を押すと、ギィッと音を立てて、扉がゆっくりと開いた。
中に入ると、そこは、想像していたよりもずっと明るい空間だった。高い天井、ステンドグラスから差し込む光、そして、床に敷かれた美しい絨毯。どれもこれもが、私を優しく包み込んでくれるような気がした。
奥から、優しい歌声が聞こえてきた。それは、まるで、この洋館の歴史を語りかけているかのような、懐かしいメロディー。その歌声を聞いていると、心の中の不安が、すっかりどこかに消えてしまって、代わりに、温かい光が満ちていくのを感じた。
この場所には、きっと、目に見えない不思議な力が宿っているんだろう。そうとしか思えないくらい、心が穏やかになった。
洋館の中を、あてもなく歩いてみた。どの部屋も、美しく整えられていて、まるで、誰かが私を迎え入れるために、準備してくれていたみたいだ。
この洋館は、私に、新しい自分への扉を開いてくれたのかもしれない。そう思うと、心が、なんだかワクワクしてきた。もう、不安な気持ちはどこにもない。
空を見上げると、いつの間にか、雲の隙間から太陽の光が差し込んでいた。その光は、まるで、私を祝福してくれているかのように、あたたかくて、まぶしかった。
この洋館に来てよかった。ここで感じた気持ちを、私はきっと、ずっと忘れないだろう。坂道の向こうに、こんなにも素敵な場所があったなんて。新しい扉が開いた今、私は、まっすぐ前を向いて、歩き出そうと思う。
このストーリー、および登場する画像はAIによって生成されたフィクションです。あくまで創作としてお楽しみください。